いっとき間違っても、まっとうな道に戻りましょう
高速船クイーンビートルの浸水隠蔽についての第三者委員会調査報告書を読み解いてきた。
この事案で、JR九州高速船がまっとうな道に戻る機会はあったと思う。浸水の記録が2-3日で終わらず記録簿のようになったときに、これはまずいよ、やめよう、と誰かが言えば引き返せたのではないだろうか。それが若い船員だったとしても、公益通報保護法が整備された今の時代に、従業員に黙っていろと言える経営者はさすがにいないと信じたい。
高速船クイーンビートルの浸水隠蔽についての第三者委員会調査報告書を読み解いてきた。
この事案で、JR九州高速船がまっとうな道に戻る機会はあったと思う。浸水の記録が2-3日で終わらず記録簿のようになったときに、これはまずいよ、やめよう、と誰かが言えば引き返せたのではないだろうか。それが若い船員だったとしても、公益通報保護法が整備された今の時代に、従業員に黙っていろと言える経営者はさすがにいないと信じたい。
昨日の記事で、浸水の事実を当局に隠し通すことは不可能だと述べた。一般に、報告すべき問題を隠蔽しようとしても、決してうまく行かない。うっかりしゃべってしまう仲間がいたり、隠蔽していると知らない人がしゃべったり、仲間うちから内部通報があったりする。経営者は、利害関係者に対して堂々としていられるようにせねばならない。コーポレートガバナンスの目標をパフォーマンスとコンプライアンスとした意味の一つの側面だ。
※9/30の記事「コーポレートガバナンスの目標は二つ」参照。
高速船クイーンビートルの浸水隠蔽についての第三者委員会調査報告書を読み解いている。
この事案に関する具体的な問題行動は他にもあった。隠蔽された浸水が始まった初日に浸水量の記録を取るように運航管理者が船長に指示したのだが、その記録は航海日誌などの当局が閲覧し得る公式記録にではなく、非公式の記録簿にされた。3ヶ月もそれを続けたわけだが、浸水の事実を当局に隠し通せると考えたように見える。それは不可能だ。
高速船クイーンビートルの浸水隠蔽についての第三者委員会調査報告書を読み解いている。
浸水警報装置を本来の位置から上方へ移動させた件、社内での相談や報告はされていた。運航管理者代行、運航管理者、安全統括管理者、そして社長まで承知していたのに、誰も異を唱えなかったのである。浸水の事実を隠ぺいするために浸水警報装置を上方へ移動させたことが、安全軽視という観点でのちに問題になる可能性を考えなかったのだろうか。
※浸水警報装置は、浸水の水位がセンサーの高さに達すると警報が作動する。上方へ移動すると、より多くの浸水に達するまで警報は作動しない。
高速船クイーンビートルの浸水隠蔽についての第三者委員会調査報告書を読み解いている。
この事案で私が次に重大と思うのは、浸水警報装置のセンサーの、本来の位置から上方への移動だ。浸水が徐々に増えて、このままでは警報が作動して浸水を当局へ報告せざるを得なくなり、運航できなくなることが理由だった。船員にとって、浸水警報装置は自らの命を守るためのものでもある。誰に「やれ」と言われてもやりたくないと思うのだが。
※浸水警報装置は、浸水の水位がセンサーの高さに達すると警報が作動する。上方へ移動すると、より多くの浸水に達するまで警報は作動しない。
二週間前に「内部統制、ガバナンスとリスク管理の関係」という記事を書いた。高速船クイーンビートルの事案で確認してみる。リスク管理は、運航の安全を重要と認識し、手厚いリスク対応を組み込むと決めることだ。内部統制は、リスク対応として、運航部門と営業部門の業務を分けて、安全優先と顧客満足優先の責任を分離し、難しい判断のときに経営者が気付くようにすることだ。ガバナンスは、この組織の責任分担を実現することだ。
高速船クイーンビートルの浸水隠蔽についての第三者委員会調査報告書を読み解いている。
船を運航する企業なら、船の事故は最重要リスクの一つである。運航部門や運航管理者には運航の安全の責任を負わせ、利益や顧客満足の責任は営業部門に負わせる。この事案の場合は、そのような責任分担が曖昧だったのか、浸水発生時に、予約客のために運航を継続する方向に幹部の意見が偏り、社長はそれを追認した。ガバナンスの欠陥である。
高速船クイーンビートルの浸水隠蔽についての第三者委員会調査報告書を読み解いている。浸水隠蔽が始まったときに、船長や船員は明示的に当局への浸水の報告をしていないと聞いてはいなかったそうだが、報告しない方針だと認識していたという。こういうとき、船長や運航管理者は、運航の安全に関しては頑なでなくてはならないが、事前に言い聞かせておかないと空気を読んでくじける。言い聞かせて支えるのは経営者の仕事の一環だ。
高速船クイーンビートルの浸水隠蔽についての第三者委員会調査報告書を読み解いている。JR九州高速船が浸水に関して定めた方針は、少量でも浸水があれば関係機関に速やかに報告、というものだった。それに基づいて、問題の浸水隠蔽が起こる前月までは、少量の原因不明の浸水でも当局に報告されていた。だが、問題の浸水隠蔽は、一晩だけ様子を見るはずが、当局に報告せずに運航を継続せよとの方針変更だと船長も船員も認識したという。
高速船クイーンビートルの浸水隠蔽についての第三者委員会調査報告書を読み解く。この事案で最大の問題は、運航していたJR九州高速船が浸水の事実を三か月を超えて隠蔽したことだ。同社の方針として、浸水の懸念があれば当局に報告することを定めていたにもかかわらずだ。初日は浸水が少量で、通風口などから海水が侵入したものと推定されたのでやむを得ない面もあるが、3日-4日と継続すればそうはいかない。そこが分岐点だった。
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